昭和五年、やくざ桜一家は浅草に縄張りを持ち、関東一円に勇名をはせていた。或る夜桜一家三代目の千之助は、暴漢に刺されるという兇行に出会った。暴漢は桜一家に楯をつく愚連隊あがりの黒帯一家であることは明白だった。しかし、千之助は、やくざ稼業の因果さにいやけがさしていた。それだけに一人娘の良子だけは、堅気な男にと願っていた。しかし良子は桜一家の一の子分重宗に慕情を抱いていた。その頃黒帯一家は愚連隊青空一家を抱きこんでおとなしい桜一家に、ことごとく絡んでいた。そのたびに中に入ってかたをつける重宗の度胸に、魅せられた青空一家の勝男と譲次はぜひとも盃をと懇願した。重宗の行為に怒った千之助は、浅草においては、危いと憂慮する桜一家顧問の池上の言に、重宗は伊勢に身を寄せた。が黒帯一家の噂を耳にしてドス懐に浅草へ帰って来た。そのあとを、弟子にとしたう勝男がついていた。勝男...