八代将軍吉宗の時世、江戸は相つぐ放火事件で、騒乱と恐怖の町と化していた。吉宗は将軍の座を紀州家に奪われた尾張大納言家の策謀であると睨んだが、確証はつかめなかった。そこで吉宗は新兵衛を使わし、密かに尾張の江戸屋敷を探るよう命じた。新兵衛の姉楓は尾張藩家老伊集院頼母の腰元として、身辺を探ったが、不審の気配は見られなかった。新兵衛も豪商に化け藩士をさぐったが、やはり何もつかめなかった。藩士と別れた後、新兵衛は数人の忍者に奇襲された。彼等こそ江戸を乱す真犯人であり、隻眼の首領竜斎の率いる甲賀十一忍衆であった。“二十一の眼”をあやつる人物は、頼母以外にないと思われた。しかし頼母はあいかわらず公儀へ忠誠を示していた。その間も江戸の火事は続き、囚人、容疑者は千人を越えた。楓から「月落ち鴉啼いて霜天に満つ」という甲賀の隠語を聞き出した。それが“囚人の脱走”を意味する...
出版社「婦人春秋」では、組合幹部の伊達、黒木、井本らが従業員の賃上げをめぐって小川社長と激論をかわしていた。アパートに戻った黒木に社長から電話がかかった。黒木は「無期限ストに入りました」と答えた。彼は副委員長の地位を利用し、会社側に情報を売っていたのだ。社長からは将来の重要な地位が約束されていた。その夜、黒木はバーで良重に会った。二人は学生時代左翼運動をした仲だった。肉体関係もあった。黒木は良重がアルバイトに家庭教師をしていた先の夫人、小川社長夫人頼子と関係を結びその口ききで入社したのだ。それ以来会っていなかった。数日後、黒木は良重から電話を受けた。ホテルで会った。同じく学友で、黒木の裏切りを忘れぬ合田が良重に様子をさぐらせたのだ。合田は弾圧の際、片足不具になり今は左系の労評で仕事をしていた。良重は黒木が組合分裂工作の資金として社長から大金を受取っ...
東京浜名湖九州を舞台に執拗な捜査で完全犯罪を崩していく、三原警部と鳥飼刑事。「松本清張の代表作「点と線」にも登場した三原警部と鳥飼刑事が、犯人が巧妙に仕組んだアリバイを頭脳と足で崩していく。三原と鳥飼の執念は犯人のアリバイを崩せるのか?【この項、TBSチャンネル広報資料より引用】」淡々とした展開ながら丹念なトリックの過程描写と主人公萩原健一の黙々と事件を追う刑事役の芝居に味があり、佳編に仕上がっている。ただ、カメラの構造を知らない視聴者には理解しにくいトリックだったようだ。
ハマの新興ボス船場の命令を受けた槇は一発で相手の心臓を射抜き、自ら警察に電話した。それから3年後。刑期を終えた槇がハマへ戻ってきた。小さかった船場組も今では港湾荷役を一手に仕切る横浜一の組にのし上がっていた。出迎えた同僚の哲次は何故組へ帰ってきたのかと尋ねるが、槇にとっては大学時代の人身事故、父の自殺という相次ぐショックから救ってくれた船場の恩義を忘れることができなかったのだ。船場の娘則子はその後、槇のことで父と喧嘩して家を飛び出し、デザイナーとして独立していた。槇がその気になればこの機会に足を洗って二人で幸せな生活を送れたはずだが、なぜだか則子に対して他人行儀だった。一本気な槇に反して、哲次は一年前に知り合った歌手の知佐子と平和な家庭を築くべく密かに計画を立てていた。そしてある日、船場の命令で幹部の山下とペイの取引に出た哲次は、身内の山下にも傷...