ヨットハーバーで働く牧夫は、二世のヒガ夫妻の助手として大島周航レースに参加していた。星空の下をシルフ号は他のヨットを大きく引き離して航走していた。交代で舵を取っていた牧夫は不思議な幻覚に襲われた。いつも見馴れている妖精の船飾りが牧夫に微笑みかけているのだ。幻影の怖しさにヒガ夫妻の寝ているキャビンを覗いたが、そこで見てはならぬものを見てしまった。デッキにもどった牧夫の顔に恍惚とした表情に続いて険しい怒りがこみあげた。しかしそれも瞬間のことだった。「そうだ!俺も俺のヨットを持とう、俺だけのヨットを--」それ以来牧夫は別人のようになった。金を貯め始めた。そのためには手段を選ばなかった。ヨット使用料のピンハネ、船の塗装、ヨット客への恐喝、そんな牧夫を見て恋人の初枝は悲しんだ。しかし牧夫は取り合わなかった。そして初枝の弟の時次と一緒の時だけはいつも明るかった。...
昭和20年7月初頭。すでに敗戦の色濃いころ、瀬戸内海の特別基地で柿田中尉(葉山良二)、黒崎中尉(石原裕次郎)、久波上曹(杉幸彦)、今西一曹(長門裕之)らの若き“回天”特攻隊員は連日、必死必殺の猛訓練にいそしんでいたが、出撃を間近に控えて彼らは故郷へ帰る。そして柿田少尉は許婚の玲子(左幸子)と、久波上曹は小学校の教え子や滝先生とだるま船の我が家に帰った今西一曹は病身の弟(津川雅彦)らの家族と空襲で両親を失った黒崎中尉は妹の洋子(芦川いづみ)と最後の別れ一時を惜しむのだった。7月18日早朝。橋爪艦長(森雅之)の指揮する潜水艦伊号五八は、柿田少尉ら四人の回天特攻多聞退院を載せて海上や陸上からの歓声のなかを“非理法権天”“宇佐八幡大武神”に2旗をひるがえしながら出港するのだが。
国際港横浜--その夜、佑介は浅倉という麻薬売人の護衛をやることになった。浅倉の仲間橋口を加えて三人は買手の高野が経営するキャバレーセブンに集まる。が、問題の麻薬を高野の子分石井が浅倉の指定した隠し場所から運ぶ途中パトカーに追われた。高野は怒ったが、その手は何人かの男の写真をはりつけたカードをさりげなくもてあそんでいた。三人は引き揚げた。夜ふけ、街を行く橋口に死の銃弾が。彼は、俺は関東の麻薬官だ、トランプの写真に気をつけろ、と佑介に言って死んだ。翌日、浅倉はオトリになるのは許してくれと佑介に懇願した。佑介は実は関西担当の麻薬取締官で元密売人の浅倉をオトリに横浜へ来ていたのだ。橋口射殺を憤った佑介は浅倉を連れて“セブン”に乗り込み、用心棒の吉岡と対決した。吉岡の目に何か訴えるものがある、佑介は反撃の手をゆるめた。一方では浅倉が高野や子分にいためつけ...