元禄八年、赤穂城主浅野内匠頭は、家臣たちを率いて川狩を催したが、その際飛び交う燕を見て不破数右衛門に刀で斬るよう命じた。数右衛門は見事に斬ってのけたが、後で殿の一時の慰みに添うことは不満であるとして辞意を表明した。だがこれが反って殿の気に入って、数右衛門は江戸参勤の供に加った。彼の親友は武林唯七だったが、大野定九郎は数右衛門を嫌っていた。定九郎は乱脈な生活を送り、小料理屋の娘お新とたわむれる男だった。江戸に出た数右衛門は、或る日旗本武士に困らされている千賀に出合い、彼らを追い払った。それ以来千賀とその父小山田一閑の家を訪れる様になったが、若い二人の気持は接近し、父の一閑もそれを認めていた。その頃定九郎が江戸へ姿を現わし、千賀の兄庄左衛門を通じて彼女に結婚を迫ったが断わられた。しかし定九郎の子をはらんだお新が国元からやって来て一時数右衛門をたよって行っ...
「飢餓海峡」「血槍富士」などで知られる巨匠内田吐夢の遺作となった作品。代表作の「宮本武蔵五部作」のあとに作られた、宮本武蔵番外編という感じで、武蔵とくさりガマの名手、宍戸梅軒の死闘をたたみかけるようなスピードで描いた作品。もう以前のように大作を撮れなくなった内田吐夢が、低予算ながらもその力を発揮し、一般的なチャンバラ時代劇の枠には収まらないような特異な作品を作り上げ、高い評価を得た。チャンバラそのものよりも戦う男の気迫と哲学を描いた内容で、5部作に展開された武蔵の生きざまが凝縮されたような迫力。