城南大学の空手部員古島菊男の父辰造は、やくざ古島組の親分だ。菊男はそんな父辰造の生き方を嫌ってことごとく反抗していた。そんな家庭の事情とは知らぬ同級の亘理展子は、空手を嫌いながらも男らしい菊男にほのかな慕情をよせていた。ある日菊男は、山中組の葬式に、古島組の跡継ぎとして出席した。式場では、山中組の跡目をつぐべき幼少の嗣子が成長するまでの後見人を決める人選が行われていた。年長の大熊親分からの推薦で辰造が指定されたが、新興やくざの阿久津は難色をしめした。しかし辰造は仁義をわきまえない阿久津に山中組をまかせることは出来ないと、故人の残した一千万の借金をかぶって後見人をひきうけた。一方菊男は阿久津の悪らつないやがらせを受けたが、やくざ同士の争いを嫌う菊男は、だまって引さがった。が、腹のおさまらない乾分鉄火定は、単身阿久津組に殴り込みをかけた。これを知...
大学医学部助教授松浦亮輔は研究に没頭し、世事にうとく、妻ゆき子は家計が苦しく、内職に精だした。亮輔には三人の娘がいた。長女智恵子は工場の栄養士、次女都紀子はタイピスト、三女久美子は速記者志望の高校生。娘たちは父が仕事のために母をかえりみず、母があまりに従順すぎるのに不満だった。ある日、都紀子は社長に呼ばれ、父を研究主任に招きたいといわれた。話を聞いたゆき子は、夫が仕事を金で売るはずがないといった。智恵子の恋人で医学生の中田は、およそ恋愛に不向きなタイプだが、そんな彼を亮輔はほめるのだった。久美子は男の級友たちと人形芝居の巡回に行くのを父に反対されて大ムクレ。都紀子は友人のパーティに行き、酒を飲んで帰った。父は都紀子を叱った。日頃のウップンを都紀子は父にぶつけた。お父さんはお母さんや、私たちの気持をちっとも考えない、横暴だわ。亮輔は都紀子を殴りつけた。...
三沢暁子は結婚したからといって、必ずしも幸福になるとは限らない……これが蓮池弘志との見合をためらわさせた。死んだ父恭介は有名な国文学者だったが、家庭的には冷い男だった。暁子はやがてする自分の結婚は、父母のようなものならしたくないと考えていた。ある日曜日、暁子は母吉枝の友人薄井常子の紹介で蓮池青年と見合をした。型通りの会合が終ると、蓮池は明日の約束をしてさっさと帰ってしまった。吉枝や常子はそんな蓮池を男性的と賞めるが、暁子は好意をもてなかった。翌日、暁子は蓮池と会わずに、幼友達の喜代をたずねた。そこにはミツも来ていた。三人は戦争中疎開した房州での仲良しだった。幸代は西島と結婚し、ミツも漁師の三次と結婚して、それぞれ幸せそうだった。その夜、暁子を待っていた蓮池は彼女を責めた。暁子は学生時代から父の友人の佐々木教授の手伝いをしていた。そこでわかった父は別人...
山間の小駅。午前二時を指す時計のかかった待合室には、水害で列車が立往生、足止めを食った乗客がたむろしている。重役夫妻、男女学生、老夫婦、オンリーの夏子、田舎娘など、色々な人がごった返す待合室の隅には、乳呑児を抱えた時枝が、ひっそりと佇んでいた。そして、その傍には一本の手錠でつながれた刑事と殺人犯の森がいた。宿屋のない土地とて一同はバスで次の駅へ出ることになる。しかし行手には山崩れの峠道と八時間の暗夜の行程が待っていた。その上、出発を目前に、二千万円を奪って逃げた二人組の銀行ギャングが、この方面に立回ったという情報が入った。乗客は動揺、バスの人数は半分に減った。残った十四人を乗せバスは不安と恐怖とともに進んだが、漸く夜が明けかけ一同ホッとする。しかし時枝の表情は何故か暗いまま。やがてバスは壊れかけた橋を危うく渡るが、そのドサクサに時枝が姿を消す。全員が...
刑事物語シリーズ第八弾。今回は舞台を温泉草津に移して、そこに起った謎の郵便車強盗事件にからむおなじみ親子刑事のアクションドラマ。